手を差し伸べる勇気
サラリーマンの聖地とされる首都圏の某駅にあるお手洗い。
私は手を洗っていました。
すると、人の気配と「カンカン」という耳慣れない音にとっさに顔を上げて鏡越しに後ろをみました。
そこには、少し大柄な男性が映っていました。
私はとても驚き、ほんの一瞬パニックになりそうでしたが、すぐに振り返りハッとしました。
その男性は、白状(目が不自由な方が使用する杖)を持った方だったのです。
大きなリュックを背負い、片手に白状、片手を壁に添わせて慎重に歩いていました。
ですが、ここは「女性用トイレ」。
私とその男性以外は誰もいない状態でした。
とっさに、「すみません、ここは女子トイレですよ💦」とお声がけをしました。
すると、男性はとても驚き、「すみません。すみません。間違ってしまいました。本当にすみません。」と慌てふためきながら
謝罪をされました。
逆に私が申し訳なくなるほど不安そうな顔で何度も謝る男性を見て、私の心はキュッと締め付けられるような感覚を覚えました。
そこで、「全然気になさらないでください。それに今私以外いませんし。よかったら男性トイレまでお連れしましょうか?」
と伝えると、「本当ですか?助かります。ありがとうございます!」と、やっと顔をはっきりと上に向けました。
では、私の肩を掴んでくだいね。手を取りますね。と一声かけた後、男性の手を私の肩へ誘導しました。
(ちなみに、目が不自由な方を手助けする際に、相手の腕やその他の部分などを誘導側が掴むやり方は良くないそうです。腕や肩などに手を添えてもらって誘導するのがベスト。たまたま知っていてよかったです。)
2人で話しながら歩幅を合わせてゆっくり歩き、無事男性トイレに到着しました。
すると、男性が「本当にありがとうございました。やっぱり慣れないところはどうしても分かりにくくて💦本当に助かりました。
本当にありがとうございます」と満面の笑顔で言ってくれたのです。
私はその瞬間、なんとも言いがたい、とても幸せな温かい気持ちになったんです。
本当にあの瞬間声をかけてよかった。勇気を出して手を差し伸べてよかったと。
何が言いたいかというと、別にこれは私の美談として語りたい訳ではなく(笑)いや、多少それもあるかな?!(笑)
単純に、日常生活をしている中で、大なり小なり何かで困っている方や辛い方っていると思うんですよね。
例えばお年寄りや妊婦さんに席を譲るとかでもそうですが、気持ちでは譲ってあげたい、その方がいいって思っていても、
「断られたらどうしよう」とか「余計なお世話かな」「逆に嫌な気持ちにさせるかな」とか、つい頭で考えてしまって結果として
行動に移せずモヤモヤしてしまったり。そんな経験したことがある人って結構いると思うんです。
でも、そんなこと考えたって仕方ないんですよね。だって、行動に移してみないとその後の結果なんて分からないんですから。
確かに、中には自分が親切でしたことに対して予期せぬ反応を返してくる人もいますよ?
でも、そんな時はイラッとするかもしれませんが、必ずしもみんながそうだと思わないでほしい。
本当に心からのありがとうを伝えてくれて、温かい気持ちにさせてくれる人の方がきっと多いのですから。
偽善だと言われても、そういうことで心がほんわかできるような人間でありたい。
そして子供にもそんな人になってほしい。
そんなことを思うのです。
手を差し伸べる勇気までのハードルは、ホントはそんなに高くないと思いますよ。
(2022年6月1日)